ふわふわわたげのように軽やかだけどしっかり芯のある話。
最初から最後まで、主人公の下の名前が出てこなかった話は初めて読んだかも知れません。
あと主要人物の女の子の双子がいるんですが、これも正しい読み方がわからなかった。(笑)
和音、由仁。わおん?かずね?ゆに?ゆい?すみません。(^^;)
個人的にはこの事に象徴されるように、人の輪郭を掴むことが困難な話でした。良くも悪くもです。
どんな人なのか、主人公の外見の説明も特になかったと思います。
わたげのようなふんわりやわらかな、触れているようだけど、手のひらでほ〜んわりとしか触れない、がしっとどんな形なのか掴めないような。
ちょっとやきもき、歯がゆい感じが終始ある作品でした。
でもこれ批判じゃないです。
こんなに人物描写が綿のようによくわからないのに、ピアノの調律について、音楽について、また主人公の音の感じ方、広がり方について様々な角度から描写されていて、作者の表現力に脱帽します。
下手だったら読み進められなかったと思う。退屈になりがち。大きな話の動きがないから。
時間の流れも少し突発的でついていけなかったり。読んでてあれれ?とたまに置いてかれる。
主人公は、おしゃべりでも明るくもなく、ただ実直にまじめに調律に取り組んでいる。
その姿勢を、この道に進むきっかけをくれた誰からも一目置かれる調律師の高齢男性や、お兄さんのように一緒に行動しながら見守ってくれる先輩や、優れた技術力や音感をもつ元ピアニストを目指していた上司が見守っていてくれる。
社長も、事務のおばちゃんも暖かく見ていてくれるのは、きっと彼が良い人で努力家だから。
周りの人の彼への対応から、彼がどんな人物なのかを想像しやすくさせるのね。
こういう書き方もあるんだな。彼のしていることを読んでいればわかるんだけど、
周りからの視線が暖かいことでも強く裏付けられるのね。
まだ若い主人公は、ピアノ、音、反響への感じ方やこだわりを、迷いながらも離すことなく、親族と話したり風を感じたり過去を振り返ったりしながら、自分の足で進んでゆく。
調律の森を、芯をもって着実に歩んでいく。
やっぱりラストは感動する。批判めいていた上司まで彼のひたむきさから徐々に認めていく。
未来ある若者が自分の進む道を迷いながらも一生懸命に歩んでゆく姿は胸をうつ。
郷愁のような爽やかな苦さと眩しさが感動的な作品でした。
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私は読みましたが観てはいません。
この作品の醍醐味は主人公等作品の中に生きる人々の姿が具現化されていないことだと思うのです。
だからこそ音や反響など目に見えないことの描写が生きてくるし、読み手も夢中になるのだと。
なので、映画はどうなっているんでしょうねぇ。
三浦友和さんが演じる板鳥さんはちょっと気になります。良い仕事するんでしょう。
んが。しかし。フルネーム出てるのは、やはり違和感が…
名は体を表すと言いますから。
お名前からどんな人物なのか、色々考えてしまうのが、純粋に作品を楽しむ上では邪魔だな、と。
ご興味のある方はぜひ。
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ありがとうございました。
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